赤ちゃんの発達~栄養編1~
こんにちは!!看護師れんです!今回は赤ちゃんの「栄養」について発達の仕方を絡めて紹介していきます!
1.赤ちゃんの「栄養」に対する特徴!
☑固形物が食べられない!
まず、新生児は大人と違って固形物を食べることができないですよね。その理由は、消化吸収の機能が未熟なだけでなく、口の中で舌を使って「固形物を喉の奥まで運んで飲み込む(嚥下えんげ)」という一連の運動がまだできないからです。
✓もし、新生児に固形物をあげてしまうと……??
・いつまでも口の中に残ってしまう……。
・固形物の大きさでは窒息する可能性も!
固形物を息を止めてごっくんと飲み込むことを、成熟嚥下(せいじゅくえんげ)と言うのですが、これができるのは大体3歳くらいなんです。
✓では新生児はどうやって食事をとるのでしょうか??
これは皆さんの予想通り、「ちゅぱちゅぱ」と吸啜(きゅうてつ)することによって、ミルクなどの液体を口腔内から喉の奥へ送り込んで流し込む、乳児嚥下(にゅうじえんげ)を行います!
✓新生児の1日に摂取する食事量!
新生児の栄養は大人が食する固形物だけでなく、カロリー濃度の薄い流動食に頼っているので、新生児は多量に、かつ、頻回に(8~12回)に飲まないといけません!
*大体ですが、新生児は1日に200㎖/kgを飲みます!
これを大人に置き換えると、60㎏の大人では、12ℓのミルクに相当するんですよ!
自分に置き換えるととんでもない量ですよね!!
☑生理的な呑気症
新生児は、ミルクと一緒にたくさんの空気も飲み込んでしまいます!なので、新生児の異は成人の胃に比べて、縦型になっています。構造的にもゲップとして空気を出しやすい構造になっているのです!でも、ゲップを出しやすいということは、ミルクを吐きやすいということでもあります。これが、いわゆる溢乳(いつにゅう)や、反芻(はんすう)です。新生児が吐いてしまったり、よくゲップするのが当たり前にみられるのは、胃の構造が大人とは違うからなんです。
☑消化管の運動機能が不十分
新生児の胃を固定している靭帯は、母体からのエストロゲンの影響で生理的に緩いため、胃の軸捻転(じくねんてん)が起こりやすいのです。
✓軸捻転がおきてしまうと…?
軸捻転が起きると、飲み込んだ空気は排気されにくくなってしまい、腸の方に移動して腹満や嘔吐の原因になります。発生したら、伏臥位といってうつ伏せにすると自然と緩解していきます。この胃軸捻転症は、靭帯がしっかりしてくる生後2~3か月頃には消失するといわれています。
新生児の腸管壁の筋層は薄く、かつ蠕動運動(腸の動き)も不規則で、全体的な協調運動が悪い為、簡単に腸管拡張や腹部膨満が起きてしまうのです。
☑栄養代謝が未熟!
消化吸収した栄養物の代謝に関しても、未熟性に伴ういくつかの問題が挙げられます。
ちょっと専門的な用語がたくさんでてきますが、なるべくかみ砕いて説明しますね!
メチオニンからシスチン、さらにタウリンを作り出す酵素(シスタチオナーゼ)が不足している為、シスチン、タウリンが合成されず、逆にメチオニンの血中濃度が高くなってしまいます。なので大人では、体内で合成されるシスチンやタウリンを、新生児であれば外から与えないとならない為、準必須アミノ酸の1つとなっています!
同じ様に、フェニルアラニン、チロシンにも見られ、タンパク質の負荷がある限度を超えると、高フェニルアラニン血症(フェニルケトン尿症)や高チロシン血症が起こって臨床症状のみならず、長期的な神経発達に及ぼす影響が考えられます。
▽上記に書いてあるアミノ酸物質について簡単にまとめてみました。
シスチンやタウリンとは? |
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シスチンやタウリンは母乳に含まれるアミノ酸の1つ!大人なら他のアミノ酸から合成できますが、上記で述べた通り、赤ちゃんはその能力が未熟なので作ることができません。
ちなみに、タウリンは赤ちゃんの脳や目などの神経の発達に重要な役割を果たしてくれます。徐々に分かってきた事ですが、タウリンは母乳でも初乳に多く含まれているとか……! |
フェニルアラニンもアミノ酸の1つ!これも外から摂取しなければなりません。肝臓でチロシンに変換されて、皆さんもご存知のノルアドレナリンやドーパミンなどの興奮性の神経伝達物質を作り出します。 |
高フェニルアラニン血症 フェニルケトン尿症(PKU)とは? |
高チロシン血症とは? |
アミノ酸の一種であるフェニルアラニンを体内でうまく利用するには「フェニルアラニン水酸化酵素」と呼ばれる酵素が必須になります。
この酵素を作り出すのに必要な遺伝子が、「PAH遺伝子」といいます。この遺伝子に異常が生じることでフェニルケトン尿症は発症するのです。ちなみに、常染色体劣性遺伝形式をとる先天代謝異常症です。
フェニルアラニンを体内でうまく利用できないと、体内に過剰に蓄積されてしまいます。その結果、脳細胞に障害を引き起こし、けいれんを生じたりと重篤な症状が現れます。 |
チロシンというアミノ酸が代謝されずに起こる常染色体劣性遺伝病です。現在はⅠ型、Ⅱ型、Ⅲ型の3つの病型に分類されています。 Ⅰ型 もっとも重症で、肝障害、腎臓の尿細管障害、腹痛などを起こします。急性の場合、乳児は肝不全で早期に死亡することが多く、慢性の場合は肝硬変から肝がんに移行することもあります。 Ⅱ型 目と手足の皮膚に症状がでるのが特徴です。軽い知能低下もともないます。 Ⅲ型 非常にまれです。軽度の知的障害、けいれん発作、周期的な平衡感覚の消失と協調運動障害が見られます。
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下記に簡単に新生児栄養の特徴の問題点をまとめてみました。
2.消化管機能の発達!!
赤ちゃんの栄養に関する特徴はご理解できましたでしょうか?それを踏まえて、次は発育、発達について詳しく紹介していきます!
☑吸啜(きゅうてつ)
吸啜反射という言葉をご存知でしょうか?指を口元に持っていくと誘発されて、「ちゅぱちゅぱ」と吸い付く行動を示す原始反射の1つなのですが、これは実際にミルクを飲むときの吸啜とは違うのです!
▽吸啜反射とミルクを飲むときの吸啜との違い
吸啜反射 |
1秒間に2回の吸啜を4~13回程続けて、数秒休んでまた繰り返します |
ミルクを飲む時の吸啜 |
1秒間に1回程度の吸啜運動をゆっくりと連続して行います |
✓赤ちゃんが母乳を飲むときのメカニズム
舌で乳首や乳房を口腔蓋に押し付けて後方から前方へしごき出す圧出要素と、口腔底を広げて口腔内の容積を大きくして口腔内に陰圧を作って吸い出す吸引要素の2つからなっています!
つまり、単に陰圧を作って吸い出すのではなく、赤ちゃんは乳首や乳房の一部を口に含みしごき出しながら吸引するのです。吸啜によってミルクが喉の奥に達すると、嚥下反射が引き起こされて、飲み込むことができるという訳です!!
☑嚥下について
在胎16~17週頃 |
羊水を飲む嚥下がみられて、この時期の胎児は1日に2~7㎖の羊水を飲み込んでいます。 |
在胎20週頃 |
羊水を約16㎖/日飲み込んでいます。 |
在胎32~34週頃 |
ごっくんと飲みこむ嚥下反射が完成するのは大体このくらいです! *32週以前の早産児に経管栄養を行わなければならないのはこの時期に嚥下反射が完成するからなのです。 |
在胎40週頃 |
羊水を約450㎖~500㎖/日飲み込んでいます。 |
✓羊水のカロリー
お腹の中にいる赤ちゃんって早くからごっくんと羊水を飲み込んでいるのです。では、この羊水のカロリーなんて、聞いたことがありますか?
大体15kcal/ℓで、1日500㎖の羊水を飲み込んだとしても、7.5kcalにすぎません。
胎児が羊水を飲み込むことが、羊水の循環の重要な役割をはたしていて、食道閉塞などなんらかの原因がある場合で、胎児が羊水を飲み込めなくなると羊水方が起こってきたりします。
☑蠕動運動(ぜんどううんどう:腸の動きのこと)
消化管の動きは主に、自律神経によってコントロールされています。
交感神経 |
刺激されると腸の動きは弱くなる |
副交感神経 |
刺激されると腸の動きは強くなる |
大人でも、緊張すると、交感神経優位になって腸の動きは悪くなって、副交感神経遮断薬である、アトロピンなどを使用すると腹満になりますよね!
消化管の蠕動を起こす神経の発達は、口側から肛門側に向かい完成されていきます。
在胎7週頃 |
腸蠕動が始まります |
在胎16週以降 |
本格的に蠕動運動が始まります |
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✓胃内容物の消失期間
羊水中に造影剤を投与した研究が行われたのですが、その研究結果より以下の事が分かっています。
造影剤が小腸末端まで達する期間は、在胎32週頃で9時間!
40週頃で4~7時間でした!
生まれてからは、未熟児の方が正常児より、また新生児の方が成人よりも到達時間は短いのです。つまり、新生児は哺乳から排便までの時間が短いというわけです。
かなり細かく説明しながら紹介してきましたが、分かりにくかったことなどありますでしょうか?普通は知らない情報もかなり多かったかと思います!少し専門的な部分もありましたので、分かりにくければコメント下さいね!赤ちゃんの発達は奥が深くて伝える事が盛りだくさん!!まだ栄養編も全部はお伝えしきれていませんが、今回はここまでにしておきます!