私が助産実習で出会った妊娠高血圧症候群(PIH)の妊婦さんのお産 ~高血圧状態でのお産に臨む危険性と対処~

 

初めまして。看護師助産師資格のW資格取得した現役看護師れんです。今回は、私が助産師実習で出会った、妊娠高血圧症候群(PIH)の妊婦さんの出産について記事にしました。

この記事を読んでいるあなたも妊娠中いつ、高血圧になるかわかりません。学生の皆さんも、ここは押さえておくべきポイントです。また、これは旦那さんにもぜひ知ってもらいたい内容になっています。お母さんが辛い時、旦那さんの支えが頼りになるのです。

 

 

妊娠高血圧症候群(PIH)とは?

 

妊娠20週以降分娩後12週までの期間に、高血圧(140/90mmhg以上)または、尿から蛋白(+)が出ており、単なる偶発合併症によるものではない場合、診断されます。

 

妊娠をすると、妊娠していない人と比べ、血圧は少し下がるのですが、妊娠に対する母親の体の適応不全により、血圧が上昇してしまいます。

 

残念ながら確定している要因は明らかにはなってはいませんが、リスク要因としては以下のことが挙げられます。

 

年齢

15歳以下、40歳以上

体重

肥満(BMI25以上)

合併症

高血圧/甲状腺機能亢進症/甲状腺機能低下症/糖尿病/原発性腎障害/SLE/抗リン脂質抗体症候群/プロテインS欠乏症など……

遺伝的要因

本能性高血圧/母親が出産時妊娠高血圧症候群であった/黒人の方

出産回数

初産婦

妊娠関連

多胎妊婦(双子や三つ子)/*胞状奇胎

*異常な受精卵が増殖したり、胎盤の組織が過剰に増殖した状態。

 

私が出会ったお母さんは38歳と高齢出産であり、BMIが25以上の方でした。参考書にはリスク要因の年齢の所が40歳以上となっておりましたが、35歳以上からが高齢出産です。35歳を超えると、妊娠に伴う様々なリスクが伴ってきます。ですが、高齢出産で肥満であったからと言って、全員がなるわけではありません。もし、診断されたとしても、決して自分を責めてはいけません。

妊娠中の高血圧は全妊婦の10%に存在し、この中の70%が妊娠してから高血圧になっています。割合を考えると、結構いらっしゃるのです。

 

〈主な症状〉

✓高血圧による頭痛

✓高血圧(140以上/90以上)

✓尿蛋白(+)

✓浮腫(むくみ)

 

たまに、命に関わる重症な合併症を引き起こすことがあるので、たかが血圧と思わないで下さいね。重篤な症状としては以下が挙げられます。

 

✓DIC(血液が固まり血栓がいくつもできたり、止血が間に合わず大量出血を起こしたり、最悪母子共に死亡することも…)

 

✓子癇(頭痛や目のかすみ、意識障害をともなうけいれん)脳出血

 

✓肺水腫(肺に水が溜まった状態であり呼吸するのがかなりしんどいです)

 

✓肝機能障害、HELLP症候群(腹痛や嘔気があり、進行すると血液が固まりにくくなり全身の臓器が障害されます。今の職場の同僚がHELLP症候群での出産でした。身近にいるんだと驚きました。先輩の話を聞くと涙ものです泣 母子ともに命に別状はありませんでしたが、子供は障害をもって生まれました。障害のある子どもにたっぷりの愛情を注いで子育てに奮闘中な素敵な先輩です)

 

✓腎機能障害

 

✓常位胎盤早期剥離胎盤が早い段階で剝がれてしまうこと。赤ちゃんが死亡することも…)

✓胎児発育不全(FGR)

✓胎児機能不全など……

 

☑治療

ターミネーション(妊娠の中断)を医師から告げられることがあります。

これには以下の2つの場合があります。

✓重症な妊娠高血圧症候群であること。

✓母親の状態悪化や合併症、胎児機能不全があること。

 

もし、「医師から妊娠を中断しましょう」と告げられた場合、お産を誘発させたり帝王切開をすることがあります。(主に、帝王切開をすることが多いです)

 

ですが、上記以外の場合や、赤ちゃんが未熟な場合は薬を使い、できる限り妊娠を継続して適切なお産になる様に治療していきます。

安定していれば、妊娠40週までにお産終了を目指しましょう。

 

治療内容としては、まずは絶対安静が必要です。病院に入院し、減塩食を食べてもらいます。

 

次に、薬物療法ですが、降圧薬(ニフェジピンやニカルジピン、ラベタロール、メチルドパ、ヒドララジン)や、硫酸マグネシウムを投与します。

 

助産師学生は、妊娠高血圧症候群と言えば、硫酸マグネシウムと関連づけておきましょう。子癇(しかん)の治療や発症・再発の予防になります。

 

 



 

妊娠高血圧症候群を予防するには?

 

妊娠高血圧症候群の予防の基本は、バランスの良い食事です。減塩、低カロリー、高蛋白質な食事を心がけ、カルシウムを多めにとりましょう。塩分約7g以下を目標にして、薄味を心がけましょう。少し食べ過ぎた時は、ウォーキングなどの軽い運動も生活の中に取り入れてみましょう。

 

✓食事の10の工夫

 

⓵だしをきかせる。

⓶麺類の汁は必ず残しましょう

⓷漬物を食べるなら浅漬けを!

⓸減塩と名のつく調味料に変更しましょう

⓹醤油を使用する場合、食べ物にかけず、つけて食べるようにしましょう。

スパイスを活用して味にメリハリを!辛みや酸味で味が薄いことが気になりません。

カリウムの豊富な食品を選びましょう。カリウムは体内の塩分を尿と一緒に排出する効果があります。

⓼味噌汁を食べるなら、具沢山に!!(同じ塩分濃度でも減塩になります)

⓽加工食品はなるべく避けましょう。(加工食品には塩分が思った以上に入っています)

⓾料理は暖かいうちに食べましょう。(冷めてしまうと味が薄く感じます)

 

 

 

上記はぜひ参考にして下さい。助産学生さんは、実習で妊婦さんに指導をすることがあると思いますが、パンフレットづくりに生かせれたらと思います。指導の時は、死亡するかも…なんて怖いことは決して言わない様に。パンフレットに書くのはいいけど、直接言われたらお母さんはただでさえ不安なのに、それを追い込んでしまうことがあります。伝え方には気を付けて下さいね。

 

 

妊娠高血圧症候群のお母さんを受け持たせていただいた私の体験談

 

私が学生の時の、妊娠高血圧のお母さんは順調に血圧コントロールもできていたので正常分娩扱いで、当時学生だった私が赤ちゃんを取り上げることになりました。ですが、やはりいきんだり、激しい陣痛がきたりで、今までコントロールできていた血圧はすぐに180を超え、心拍数も140に近い状態に……。

 

赤ちゃんも初めは元気な心拍だったのですが段々力がなくなってきていました。学生の私ができる事は、お母さんの手を握り呼吸を誘導し、少しでも落ち着いてもらうことしかできませんでした。握っている手は段々と痺れてきて、子癇の一歩手前の時、すぐに硫酸マグネシウムが投与され、そのまま帝王切開することになりました。私はお母さんとお腹の中の赤ちゃんの無事を祈るうちに涙が出てきてしまいました。

 

赤ちゃんは38週で生まれたこともあり、特に障害もなく無事に生まれて来てくれました。

帝王切開をした後病室に戻ったお母さんはもうぐったりという状態で、私はすぐに「おめでとうございます」と声を掛けに行くと、「手を握ってくれてありがとう。れんちゃんの声聞こえてたけどうまく呼吸できなくてごめんね(笑)ありがとうね」と言ってくれて、何もできなかったのにそう言ってくれて飛び上がる様に嬉しかったのを今でも覚えています。

 

この時、助産師って凄い仕事だなぁと思いました。医師に的確に指示を仰ぎ、冷静にお母さんと赤ちゃんの状態をアセスメントし、行動する。あの時の皆が一体となって動いた瞬間は忘れられない程かっこよかったです。これから色んな場面を体験するであろう助産師学生さん、陰ながら応援しています♪きっと素敵な体験をすると思います。

 

そして、旦那さん!

ここまで読んでいただいてご理解いただいたかと思いますが、お母さんはかなり不安の中頑張っています。それに、今はコロナ渦で直接会う事ができない方も多くいらっしゃると思います。今の時代お母さんは心細い思いの中出産に臨んでいるのです。ぜひお母さんのことを労ってあげて下さいね。

 

 

岡庭 豊 (平成27年)病気が見えるvol.10産科第3版 P98-P107

 

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